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第20話:さすが東大生



ギギギー

防火扉の開いた音がする。



「おっ来たかな!」
寮生の誰かが言った。



・・・・・

・・・・・・・


ガチャン


『あっ防火扉がしまった。』


シーーン


あれ??


「おーい!入っていいですよー」
榎本さんが談話室から叫んだ。


シーン



「おい、誰か呼んでやってくれ。」

玄関にほど近い先輩が面接を受ける彼を呼びにいった。


パタパタパタ。


スリッパの音がする。


ガチャッ・・・ギー

ドアノブが回され、談話室のドアが開いた。


「こんばんはー」

彼はそう言って入ってきた。

榎本さんが

「どうぞここに座ってください」
と、彼が座る椅子の方へジェスチャーを交えながら誘導する。


そして彼は座った。


榎本さんは一息ついた後、


まず
「名前と大学名を教えてください」
と質問した。


この質問に対して彼は

「田端幸平です。東京大学理科2類の一年生です。」
と淡々と答えた。


僕は

『へえーこれが東大生かー。東大生を見るのは初めだ~。』

と何か珍しい物を見ているかのような田舎丸出しの心境であり、アルトノさんも東大生であったがその時はすっかりその事を忘れていたのだった。


榎本さんは質問を続けた。

「それでは、見学の際、説明したように、まず作文を読んでください。作文は作ってきましたか?」


「ハイ。」
彼は答えた。



「あっ作文かー。俺も面接する前の日姉ちゃんと考えたっけ。

作文って大変だよなー。

俺は掃除が得意ですとか書いて、寮へのアピールをしたんだっけ。

この東大生はどういうことを書くんだろ」

僕は、東大生が書いた作文に興味津々であった。



彼はバックの中から一枚の作文用紙を出し、その作文を読んだ。

『おっどんな作文だろ。



わくわく



ワクワク』



彼は読み始めた。


「・・・・。この桜が咲くこの4月という良き季節、大学の門をくぐり、穏やかな日差しを浴びながらキャンパスの・・・・」






『えっ??


何これ』


彼が作文を読み始めてすぐに僕は目が点となった。


なぜなら

彼の読んでいる作文は、作文というよりも詩に近かったからだ。


『はあうっ』


僕はふと我に帰り、周りの先輩たちを見る。


・・・・・・

・・・・・・・・



テン


てん


・←点???


やっぱりみんなも僕と同じように目が点だった。



そんな事も構わずに、彼は作文を読んだ。



「・・・・私は歩いていこう。」


作文が終わった。


サアーーー。

風はないのに風が吹いたような音がした。



しばらくの間、沈黙が談話室を覆った。



そして次の瞬間。


オオオーーー


パチ、、、パチ、、、パチ、、パチ、パチパチパチパチ。



拍手が起こった。


『なんだかよくわからないけど、すごい、すごいよ。

山手学舎への思いの作文なのに、

寮のこと、寮への思いなんか一言も入ってなかったのに

すごいよ!!


また、山手学舎の山のひっとことも触れていないのに、美しい。最高だ!!』



彼の読んだ作文は、僕の予想を遥かに凌ぐほどのものであり、ここにいる全員の舎生が意表をつかれる作文であった。

僕は思った。
「これが、東大生かーーー」


そんな舎生たちが、彼に心を奪われたとき、


オホン!


榎本さんが、わざとらしく咳をした。


その言葉を聴いた舎生たちは、ふと我に帰り、また面接官としての顔に戻った。


そして榎本さんが次の質問をした。

「出身地と出身校を教えてください」


すると彼は、
「生まれは大阪ですが、高校はラ・サールです。」
と答えた。


「へえ??」


「えっ。ラ・サールってあのラ・サールですか?もしかして鹿児島の?」

とっさに僕は質問してしまった。


彼はこちらをみて答えた。

「ハイ」


僕はとっさに質問するほどに驚きを隠せなかった。


なぜなら、ラ・サールとは日本において屈指の進学校であり、知らない人はあまりいない。


それが現地:鹿児島でなら、なおさらだ。



僕が小学校のときだったであろうか。


ある日、友達と遊んでいた。


そんなとき、中学生と思われるであろう人が僕たちの前を通り過ぎた。


しかし、中学生にしては服装が違っていた。


その人は学生服ではなくブレザーを着ていたのだ。


「ねーねー、●●ちゃん。なんであの人あんな服着てるんだろうね。」

僕は当時の友達に質問した。

「あっあれはラ・サールの人だよ。」


「えっ?ラ・サール??」

僕は聞き返した。


「えっ!たけちゃん、ラ・サール知らないの?ラ・サールってめちゃくちゃ頭のいいところなんだよ。僕たちじゃいけないところなんだよ」


「へえーそんなにすごいんだ。それにしても中学生なのに坊主じゃないんだね」



そう、僕たちの中学校のときまでは坊主だった。(正確に言えば中学一年生のときまで)


しかし、ラ・サールは、中学校のときからブレザーでもちろん長髪。


僕から見たら、ラ・サールの人種は何か異質の存在であり、同じ中学と言う部類の中にいるはずなのに、

これほどまでに違う中学生を見ると、


幼いながらも何か大きな格差というものを知った。


だから僕が、中学生になってからはラ・サールのことを、

当時【バザールでござーる】のCMが流行っていたので

その言葉にあやかって、ラ・サールを

〔〔ラ・サールでござーる/オ・サールでござーる〕〕

と命名したのだった。


だからいつも、ラ・サール組を見ると、

『あっ!!オ・サールだ。やーい、やーい、オサールだあ』


と心の中で馬鹿にしながら、日々をすごした。


けれども、そんなときこそ何かむなしさを感じるのも事実であったのだが・・・・。


また、

『このオサールの奴らとは一生付き合うことのない人種なんだよなー』

としみじみ思いながら青春時代をすごしたものだ。


なのに!


なにに!!


そう思っていたのに!!!


一生付き合うことのない人種だと思っていたのに!!!!


そんなオサールことラ・サール出身者はここに、まさに僕の目の前に存在しているのだ。


これほどにビックリする事件はないであろう。



姉さん、事件です!





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