Date:2007/12/14 01:31
「すいません!早く持ってきてもらいますか?水が冷たいんで!」
僕は大声を上げていた。
「わりい、わりい、じゃあこれここに置いとくから、よろしくな~」
ガチャっ、ガチャっ
「は~い。あっそうそう。これおわったやつなんで、持って行ってもらいますか?」
「りょうかい!」
僕は、風呂場にいた。
僕はジャンケンに負けたあと、それまで履いていた長ズボンを脱ぎ、半ズボンに着替え、
腕をまくり、先輩に言われるがままに風呂場にいき、シャワーの水を出して待機し、
タナアミが来たら洗うという単純作業に従事していたのである。
この単純作業、簡単と言えば簡単であるのだが手を抜いてタナアミを洗うものならあのクールな山田さんから洗い直しの命令が下る。
またシャワーを出して待機していると山田さんから
「水がもったいないだろう」
とおしかりを受ける。
時は4月。
鹿児島から上京した僕にしたら東京はまだまだ寒い。
そんな寒い中、ただでいるだけでも寒いのに水蒸気の多い風呂場で、ましてや、半ズボンをはいて腕をまくって待機しているのだから寒くてしょうがない。
そしてシャワーをつけりゃあ、山田さんからおしかりを受け、早く終わろうとタナアミを瞬時に洗おうものなら
「汚い!」
と返却されるから、なおさらタチが悪い。
『なんでこんな事を俺がしないといけないんだよ。これなら談話室班にならなきゃよかった』
・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『ハッッ!そうか。』
僕はなぜ談話室班の人気がないかよくわかった気がした。
そしてやっと風呂場の任務は完了し、談話室に戻った。
あとは冷蔵庫の内側・タナアミを拭いて、タナアミを冷蔵庫に戻し、各タナアミにあった食品を入れていけば談話室掃除は完了となるのだが、、、、、、
ここでいつも面白い現象が起こる。
なぜか各タナにあった食品をすべて戻しているつもりなのに、何種類かの食料品が残るのである。
それも結構値打ち物が。
例えば、1ネットのジャガイモ、バター、ケチャップ、即席ラーメン、なんかのルーなど
迷子の親を捜すように
「このじゃがいも誰のですか~!」
「バター誰のですか~!」
と聞き込みをしてまわっても
誰もが、
「これ俺のじゃない」
「知らない」
といってこれらはすべて舎生が、自分が買ってくる食料品であるはずなのに、談話室のテーブルに残ってしまうのである。
『みんな何を思って買物をしてるの?』
と突っ込んでしまうが、結構お値打ち物もあるので争奪戦となる。
一番人気はなんといっても、やはり即席ラーメンである。
なぜなら、周知の事実のようにお湯をかければすぐ食べられるからだ。
ここで言うすぐ食べられるという意味は、舎懇の前の大掃除と舎懇との間にすぐに食べられるということの意味である。
当時、大掃除が終わってから舎懇がはじめるまでの時間は長くて15分。
舎懇ではご飯は、勿論食べられない。
大掃除前にご飯を食べる事ができなかった者は、このわずかな時間で食べなければ舎懇が終わるまで体にエネルギーを補給する事はできない。
これは死活問題である。
ただでさえ熱く、長い舎懇をエネルギー補給なしで過ごす事は死に値する行為と言ってよい。
それほどに舎懇は厳しい試練の場なのである。
大掃除終了から舎懇までの15分。
この15分という時間はかなり微妙な時間といってよいだろう。
なぜならどんなに早くコンビニに走って弁当を買いにいって、また店員さんに弁当を温めてもらわなかったとしても、山手学舎が非常階段5Fにある事を考えると、10分近くは掛かってしまう。
つまり、残り5分で買ってきた弁当を食べなくてはならない。
これは味のへったくれもない。
ましてや
「この弁当うまいよ」
なんて食感を感じる余裕さえない。
即席ラーメンならそんな事はない。
ただお湯を足して3分待てば、残り12分で余裕をもって味わって食べることができるのだから。
「最初はグー!ジャンケンポン!」
即席ラーメンの争奪戦が始まった。
この争奪戦には先輩も後輩も、留学生もない。
ただ勝てばいいのである。
「ジャン・ケン・ポン!」
「あいこでしょ!」
「ああ、負けた」
「あいこでしょ!」
「しょっ!」
「マジかよーーー」
「あいこでしょ!」
「やった!!!!」
「よっしゃーーー勝ったーーーーーーーーーーーーーーーー!」
僕はこの手に即席ラーメンを手にしていた。
『やった!まだ今日、ご飯食べてなかったんだよねーー。 まじ嬉しいんですけど、、、、、』
そんな時、舎長(寮長)であった榎本さんが
「それじゃあ、学舎の時計で10時20分から舎懇始めるから。今日は舎懇始めるの遅いから休憩は10分ね。時間厳守!それじゃあ休憩!!」
『休憩10分しかないのかーーー。でもラーメンゲットしたもんねーーー。
10-3=7
7分もありゃ余裕でしょ!』
「それじゃあお湯はお湯ーーーお湯はどこかなー♪♪♪」
僕は即席ラーメンのフタをあけ、いざポットへ。
『アレッ???』
『アレレレレッ???』
『ポット・・・・・・・・・・・
洗浄中???
アレっ??』
そこに高木さんが近づいてきた。
「ああ、大掃除でポット洗浄したから、明日まで飲めないよ」
「えっ?それじゃあお湯はーーー」
と僕。
「沸かすしかないじゃん」
と明るく高木さん。
・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この時ばかりは、まったく関係ないのにアメリカンスタイルで明るい高木さんがかなりむかつき、かなり恨んだ僕でした。
★ココまで読んでくださった皆様へ★
多くの方々に学生のピュアの心を感じてもらいたい。



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