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第36話:偽りの友情


トン、トン、トン

『俺の部屋に誰だろ?』


「はい、どうぞ」


ガチャッ


ドアノブが回り、


「タケオいる~?」


恐る恐る覗き込むように顔を突き出しながらゆっくりドアが開いていった。



「珍しいですね。どうしたんですか、パクさん?」


そうそこには、僕が初めて寮を案内したパクさんがいたのである。


パクさんは韓国からの留学生でT大学2年生。


といってもすでに年齢は25歳であった。


しかし、この年齢なのはお国の事情が絡んでいるので仕方がない。


なぜならお隣、韓国は徴兵制なので2年以上、軍隊に入隊しないといけないのだから。


つまり軍隊に入隊する事は義務なわけで、どうしても大学進学する時の年齢は日本より高くなってしまうのだ。


またパクさんの世代の場合、現在よりも入隊期間は半年以上長く、2年8ヶ月間、軍隊にいたとか。


<現実に戻って>

「この部屋にくるなんてめずらしいじゃないですか?どうしたんですか?」
と僕。



「どうしたものこうしたものないけど・・・


私がこの部屋に来ちゃいけないわけ?」


パクさんが即座につっかかってきた。



「いやいやいや、そういうわけじゃあないんですが、パクさんが僕の部屋に来るのは珍しいなーと思って。」


僕は愛想笑いをしながら答える。


するとちょっと間をおいてから


「そうなのよ。・・・・ちょっとタケちゃん。聞いてくれる~?」

とパクさん。


「いいですよ。どうしたんですか?」

僕はベッドから起き上がり、パクさんの話に耳を傾けた。


「最近、寂しくて・・・。相部屋の田代も大学院の受験勉強でほとんど大学の図書館にこもっちゃうし、

アルトノも卒論で忙しいからつれないのよね・・・。それに高木もいないし、だからちょっと寄ってみたの。」



この言葉に僕は、パクさんはただ単にしゃべる人がほしかったんだろうなあと直感した。


なぜならパクさんは日頃、相部屋の田代さんと自分達の部屋でよくしゃべっていたし、2人でよく飲みにもいっていた。


また、留学生ということもあるのだろうかアルトノさんと仲良かったようだし、同期である高木さんとも楽しく話をしていたのを僕はよく目にしていたからだ。



そして、しゃべる人がいないから、最終的に回り回って僕のところにきたという所か。


しかし、僕はそれでもよかった。


これまでの同じことのくり返しの生活だった事、寮生達と話ができなかった事を考えると、

ちょっと違和感はあるものの、パクさんが退屈しのぎに僕のところに来ただけであったとしても、なんだか嬉しくなった。



そしてこの事をきっかけに僕はパクさんと食事をしたり、話をするようになる。


寮の事を語ってみたり、大学の事を語ってみたり、僕は水泳が得意だと言うと、パクさんは水泳を教えて欲しいというので、僕がコーチをしてあげたりと・・・。


それは僕にとってとても楽しい時間だった。


これまでの空しい時間から一転。


『やっと僕にも大学生らしい時間が与えられたんだな』

僕はそう思った。


しかし、今考えるとその時の僕は、自分を見てくれない同期たちに対して、

何か一種の競争意識を持っており、純粋に楽しむ・友情を育むというよりは

『お前らより面白いんだ・楽しんでいるんだ』という優越感をただ持ちたかっただけだったように思う。


友情はそう簡単に、しかも優越感・競争意識から生まれるはずもないのに。


そうこの時の僕はまだそれに気付いていなかったんだ。




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