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第53話:日本にいる留学生を知った僕


「どうして、いつもパクさんはそんなオカマみたいなしゃべり方なんですか?」

僕は日頃から思っていた疑問をせっかくの良い機会なので聞いてみた。


「これ?そう!そうなのよ。わたしもそう思っていたのよ。」


「えっ?」

想定外の答えに僕は意表をつかれた。



「実はわたし・・・じゃなくて俺もやめたいんだけど、なかなか抜けなくて・・・」



「えっ!?そうなんですか?好きでやってるんじゃないんですか?」


「違うわよ~」

パクさんはキッパリと否定。


「だったらなんで?」

これが僕の率直な疑問である。



パクさんは寂しげに語りだした。

「実はこのしゃべり方。

まだ日本語学校に行ってたときのことよ。

そう、私がこちらに来て間もなく、日本語もまだまだあまりしゃべれなかった・・。

そんなとき私の隣に住んでいた日本人がとても良くしてくれた。

その人のおかげ私はどんどん日本語を吸収し話せるようになっていったのよ。

そして気付いてみたら日本語日常会話が問題なくできていたというわけ。」


「え?もしかしてその横に住んでいた日本人の人って・・・」



「そう、そっち系の人」



「えっ?つまりオカマの人って事ですか??」


「そう」


「じゃあ、日本語をそのオカマの人から習っちゃったって事ですか?」


「そうなのよ~」

・・・・・・・・・・・・・・・・


なんて言ったら良いか・・・僕は言葉が見つからなかった。


でもこれだけ知った。



『絶対語学を勉強するときは気をつけよう。そして隣に住んでいる人の言葉遣いにも気をつけよう』

と。



でもよ~く考えてみるとこうして留学生と普通にしゃべりそして深い話をしているこの状況が不思議に思えてくる。



なぜなら留学生と大学生の接点はそんなに多くはないのだ。


帰国子女と留学生が多い特殊な学部なら別の話だが、それ以外の普通の学部では留学生がいたとしてもここまで深い会話する事はあまりない。


会っても挨拶程度がいい所だろう。


そして僕が大学にいくと、いつもある風景を目の当たりにしていた。


それは、

日本人は日本人グループ、留学生は留学生のグループと分かれている姿を。


【日本人】と【留学生】

これが大学での自然な形だ。



しかし、山手学舎ではどうだろう。


【日本人】と【留学生】

という見えない区分けがないばかりか同じ日本人のように接しているではないか。


山手学舎に住む留学生はときに、自分が留学生である事を忘れてしまうことがあるらしい。



「あなた日本語うまいですね」


大学や他の場所でそう言われると、ハッと『自分は留学生だった』と思い出すほどにだ。



山手学舎では「日本語うまいですね」なんて言葉は全く出てこない。

そればかりか

「その日本語違うから」

とか

「そうじゃなくてこうだよ」

とか

「今なんて言ったの?」
「はああ?」

「お前なにやってるんだよ!」

「ふざけんな!」

と注意だけでなく、時にそれが原因でケンカをしてしまう事もあるのだ。


ある意味、毎回毎回の注意は留学生にとって過酷でウザイかもしれない。


しかし、日本語が片言だった留学生ですら、山手学舎で学生活を送ると日本人と変わらないくらい、否それ以上に日本語を修得して社会へと旅立っていくのだ。


事実、僕らが山手学舎を去るとき、別れの言葉のスピーチで一番うまかったのは、僕でも田端でもなかった。

なんと今はまだ片言である白だったのだ。


ちなみに、僕が初めて白に教えたスラング(俗語)は


【くそゲー】


くそゲーとは、面白くない、価値のないゲームの略語。


彼はその後、【くそゲー】という言葉を大層気に入り、連呼するようになった。

「それくそゲーじゃん!」


「くそゲーだ。くそゲー!」

「なんだよ!このくそゲー!」
と。


しばらくの間、【くそゲー】という言葉は白にとっての流行語となった事は想像に難くない。


と、そんなこんなで山手学舎では【日本人】と【留学生】という分け隔ては全くなく、同じ人間として尊重しあいながら一緒に暮らしていたのであった。


だから僕は、大学での【日本人】と【留学生】という見えない区別を目にすると何か違和感を覚える。




「それにしてもまだ着かないんですかね~」

僕たちは歩いて、歩いて、歩きまくっているのだが、まだ山小屋は見えない。


そんな時、

「なんか軍隊の訓練を思い出すわね~」

とパクさんがしみじみ。


「えっどんな訓練を思い出すんですか?」

僕は軍隊という組織を知らないため興味津々。



「真夜中、そうだな~。今日と似てるかも。

あのときは、山という山を徹夜で渡り歩く訓練だったね。

もちろん、北(北朝鮮)との戦争を想定してのだけど。

50キロ以上歩いたかな。

それもただ歩くだけではなく、両手に銃剣を持ち、背中には20キロ以上の荷物を背負ってね」



「へえ~すごい!よく耐えられましたね」



「もうそれこそ仲間で助け合うんだよ。倒れそうになった奴をみんなで励まして進むわけ。

でもめちゃくちゃ相当過酷なことはたしか。

私達の隊ではないけど、別の隊で崖から落ちて死んじゃった人がいるくらいだから・・・」


僕はその時、パクさんのもう一面を見たような気がした。


パクさんが軍隊にいた時の事を語るときの顔は、まさに真剣そのものなのだ。


『この人って相当色々苦労してるんだな~。

徴兵制じゃない僕たちにとってはわからない世界だけど、

戦争という文字を身近に感じてしまう環境にいたんだな。

それにパクさん、軍隊のときの話をするときはオカマ言葉を全く使わないし・・・・

そういう意味で考えると、ホントにパクさんはオカマ言葉をやめたいんだな。

最初が最初なだけに・・・かわいそう』


僕は急にそんな思いにとらわれた。




「あっあれ!光が見えてきました~。パクさん!」


僕は林の向こう側から放たれる光の方向を指差した。


「あれが山小屋ですよ。パクさ・・・」


僕が横にいたパクさんに声をかけようとしたのだが、


それと同時に


「田代~ちゃーーーん!会いたかったわ~」

パクさんは僕の言葉をさえぎり、そして僕を置き去りにして山小屋に走り出したのであった。


「あっパクさん!ちょっと。ちょっと~

・・・・・

・・・・・・・

んったくも~。」


僕はこの光景を見て、


さっき一瞬でもパクさんを評価した自分になんとなく後悔した。


そして

『やっぱりこの人、絶対っ好きで!好きで!【オカマ言葉】使ってるよ』

と再確認したのである。




それから全寮生が山小屋に無事到着した事が確認されると、山小屋において第2次宴会が催されたのであった。



そして次の日。


案の定、先のドライブの捨て台詞通り、帰りの僕らの車にパクさんは乗ってきた。


そのおかげ?もあってか、帰りのドライブでは僕の活躍の場が生まれ、

当時まだ誰もが知っていた「マジカルバナナ」でおおいに盛り上がったのだった。


こうしてウザイ・クサイ・ヤバイの波乱万丈1泊2日学舎旅行はここに無事そして楽しく終了したのである。




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