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第61話:嗅ぐだけの屈辱

「それならあんた!テコンドーやりなさいよ!」

パクさんはヤンキーにからまれた僕にそうひと言。

「なんですか?その、てってってかんどって。・・・変な名前っ!」

「違う!違うわよ。テコンドーよ。テ・コ・ン・ドー。足を主に使う格闘技よ。韓国では基本中の基本よ。軍隊でも使うし。私が教えてあげるわ~!」


「へええ、そんなのがあるんですか~。

でも僕、サッカーやりたいんですよね。高校のときもずっとやってたし・・・」

僕はあまりにも唐突すぎて乗る気はしなかった。


しかし、落ち着いて考えてみると、

『そうだ。パクさんの申し出を今断ったら・・・』


「なんであんた!私の申し出断るのよ」

とか

「なんで!私のアドバイスをきけないの?」

などと何かとうるさく突っ込むであろうパクさん。

僕はそんなパクさんの行動が楽に想像できた。


『パクさん、うるせーしな~。せっかくだからやってみっか!』


「それじゃあ、パクさん今度教えて下さいよ。」

僕はパクさんにいかにも興味ありますよという顔をした。


パクさんはそれを見て、

「素直じゃないの!いいわよ。

教えてあげるわ~。それじゃあね。おほほほほ」


パクさんはそういうと喜びながら、僕の部屋のドアをバタンと閉めて自分の部屋へと帰っていった。


「でもパクさん大丈夫かな~。

俺の話は聞いてくれたから嬉しいけど、なんとなくひっかかるんだよな~。

空手はよく知っているけど、テコンドーなんて格闘技聞いたことないし・・・。

大丈夫かな~。」

僕はなんだかわからないけれども、不安に駆られる。


とは言っても最近の僕は、東京の水が合わないのか、毎朝、顔を洗って自分の顔を鏡で見ると、目の下のクマがひどい。


また体がだるくなっており、これはまずいと、わざわざ薬局でビタミンCの粉末を大量に買ってきて飲んでいたのも事実。 


『東京来てから、体の調子もよくないし。ここはせっかくだからやってみてもいいかな

・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・

よし!じゃあパクさんが教えてくれるのを待ってみよ』


僕はパクさんの言うテ・コ・ン・ドーというものがどういうものか全くわからなかったがせっかくのパクさんからのご好意なので受けることにした。



それから1日が過ぎ。


また2日過ぎ


そして3日が過ぎ



4日


5日


6日


7日


7日が過ぎ去った。


しかしパクさんからは全く


連絡がないし、音沙汰がない。



「まさか・・・」


僕は不安を覚えつつ、



ちょうど学舎に帰ってきたパクさんに聞いてみた。


「あの~パクさん! いつテコンドー教えてくれるんですか?」

僕は質問する。



するとパクさんは真顔で、



「何それ?」



「えっ???」

僕はあっけに取られた。


「えっ何それって・・・・。

パクさん先週テコンドー教えてくれるって・・・」



「そんな事言ったかしら?」



「言いましたよ。」



「覚えてない」


パクさんは真顔でそう答える。



「覚えてないって・・・」

僕の不安は見事に的中した。


そのとき僕は思い出した。

『そうだ!パクさんの顔だ!』

僕はずっとあれから引っかかっていた事がなんのかわかった。


それはパクさんの顔。


あのときパクさんの顔が赤かった。


あれはまさしく、酒を飲んだ顔だ。


僕は【あの赤くなったパクさんの顔に】なんとなく違和感を本能的に覚えていたのである。


パクさんはお酒に強く、酒飲んでも飲まなくてもいつもあのオカマ調なので、顔が赤くても酔っているのかよくわかんないところがある。



「そんなぁ~。じゃあいいですよ。わかりました。

これからでもいいので教えて下さい。」

僕は、開き直って頼んだ。




「えーなんで。嫌よ。」



「嫌って・・・」



『おめーが誘ったんじゃねーか!』
と内心穏やかでなかった僕だが、


「教えてくれるって言ったんですから。教えて下さいよ。今からでもいいですし」

と低姿勢。



しかし、パクさんは


「そんなの無理よ~。だって、私テコンドーもうできないもん」

とあっさり爆弾発言。



「ええーーできるって言ったじゃないですか?」

僕は目を丸くする。


「そりゃあできるわよ。

高校の時なんかゲーセンにあるパンチングマシーンを足でパッパッと蹴ってやってたんだから」

と、パクさんは自慢げ。



「じゃあできるんじゃないですか?」



「いやできないのよ。」



「えっ!?いや・・・でも、今できるって・・・」


『一体どっちなんだよ』

内心とてもとても穏やかでない僕。



「できるけどで・き・な・い・の!」

パクさんが声のトーンをあげる。



「それどういう意味ですか?」

と僕。


「今はもう体が硬くてあんまり足が上がんないのよ」

パクさんはしょんぼりした声でこう話す。


このときの僕はパクさんの言っている意味がよくわからなかった。


「でも、いいから教えて下さいよ。」

僕はパクさんにそれでも食いつく。



「ダメダメ、硬いとダメなのよ、じゃあねーー」

パクさんそう言うと逃げるようにバイトに行ってしまった。



『はああ~あの人も適当だな~』


しかしこの後、パクさんの言っている意味がよーーくわかる事に・・・。



ともあれ、せっかくやる気になった僕。


こんな形で終わるのは、なんとなくしっくりこない。


格闘技にせっかく興味をもってやったのに、こんな結果で終わってしまう事に絶えられなかった僕。



これは、腹を空かせた貧乏学生達が、

通常では絶対に足を踏み入れない【焼肉屋】に行ったときの状況に似ている。


貧乏学生達が【焼肉店】に入ったら、まずやる事。


それは、【一番安い肉】をメニューの中から選び、ご飯と共に大量に注文する事。

そして胃がやっと落ち着いたところで高級食材である牛タンを頼む。


その高級食材である牛タンが来ると、貧乏学生達は一目散に枚数の少ない牛タンを自分用にと確保し、丹念に一枚一枚育ていき、

いい焼き加減になるまでじーーーーと待ち続ける。


そしてよく育てた自分の牛タンを食べようとするときに限って、

横からパクッ

「あっ!」

友人が横取りをする。


しかもそれが最後の一枚だったりするわけで・・・。


目の前で丹念に丹念に育ててきた牛タンを、

ましてや金欠病で追加オーダーできないスペアのない高級食材の牛タンを、

直前で食べられ、煙とニオイだけを嗅がされる貧乏学生。


これこそ焼肉下克上。


そんな経験をした事はないだろうか?


貧乏学生にとってこれほど悔しいことはない。


しかしその悔しさを知ったとき、この貧乏学生は次に焼肉屋にで行なわれる焼肉戦争に勝利し、牛タンを確保できるようになるのだ。


そう!僕も同じだ。


パクさんによって格闘技というニオイだけ嗅がされ、それを味わうことができない。

なんとはがゆい事か!


僕はパクさんの裏切りによって逆に、それまで興味もなかったテコンドーを絶対やってやると考え始めたのである。


そして、テコンドーの道場が品川方面にあるという情報を僕はつかんだ。

「さあ、行ってみるか!」

と1人で意気込んでみたものの、

なんとなく1人で行くのは寂しい。



そこで僕は学舎の寮生達に呼びかけて見ることにした。




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