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第65話:僕はそれでも単純です。

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今日は学校が早めに終わり、午後一番で僕は学舎に帰ってきた。

「ただいま~」

そう言いながら、僕は談話室に入った。

すると、

「おかえり~」

と、どこかで聞いた事のある声が返ってくる。


「おう!お邪魔してるよ。」

そこにいたのは木田さんだった。


そう、学舎旅行で恐怖の大王と化したあの舎監の木田さんだ。

「あっどうも」

僕は、とりあえずお辞儀をした。


「学校はどうだ?もう慣れた?」


と、木田さんは今日の新聞に目を通しながらこう聞いてきた。


「ハイ、ぼちぼち」

僕は適当に答えた。


「そう。それはよかった。」


木田さんも新聞を読みながら適当に返した。


シーーーーーーーン


談話室は誰もいないかのように静かで、ただ新聞のめくる音だけが響く。


しばらくして、

ガチャッ

僕は冷蔵庫の扉をあけ、ジュースを取り出し、左手を腰に当てながらラッパ飲み。

そしてすぐ

ガチャ

冷蔵庫にジュースを戻し、扉を閉めた。


「それはそうと木田さん!」

僕は何かにふと気付いたかのように質問した。


「なに?」


「ちょっと思ったんですけど・・・」


「おう。」


「木田さんって

こんなところにいていいですか?

仕事中なのに・・・」

・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

ただ今の時間―普通の平日の昼下がり。


普通なら休憩も終わり、午後の仕事に取り掛かっている時間帯。


しかし、そんな時間帯にも関わらず、木田さんは悠然と新聞を読んでいる。


「いいんだよ。俺は舎監だし、学舎がどんな感じなのか知っとかないといけないしね。

みんな俺がここにいること知ってるから、何あったらすぐ内線かかってくるよ」
と、木田さん。


「ふーーん。そんなもんなんですか~」
と僕

そう、木田さんは山手学舎の舎監ではあるが、四六時中ずっと、舎監として学舎にいるわけではない。

木田さんは普段、財団法人ZANDの職員として、山手学舎の下の階にある事務所で働いている。

彼にとっての舎監の業務とは、こうやって平日に少し顔を出し、舎生とのコミュニケーションを通じて現状を把握し、何か学舎で緊急事態が起れば対処するというものだった。


ここで僕が【彼にとっての】と付け加えたのには訳がある。


それはこれ以降、5年間で5人も舎監が交代するためだ。


この舎監の交代の数・・・・


これまでの歴代の学舎風景と比べると尋常じゃない。


この舎監の交代劇によって、舎監の業務は変容していく事となり、山手学舎とZANDとの関係の象徴的なものとなる。

なぜ舎監がこれほどに交代し、舎監業務も変容していくのか?

それはすべてあの大事件へと繋がる布石であった事を後に僕たちは知ることとなる。


ともあれ、現在の舎監である木田さんはこうやってちょくちょく学舎に顔を出していたのだが、これが本来の舎監業務だったのか?

それともただ休憩をしにきただけだったのか

定かではない。


「そりゃあそうと、タケオってサークルとか入ってるの?」

木田さん読んでいた新聞をたたみながら質問する。


「いいえ、あんまり興味のあるサークルもないし、バイトもしないといけないので、やってないです。

でも最近になって、テコンドー始めました」


「テコンドー?
テコンドーって足とかを使っちゃう格闘技?」


「そうです!あのテコンドーです。

でも、木田さん、よくテコンドー知ってますね。結構マニアックなのに。」


「それぐらいおまえ~、知ってるよ~・・・。」

と、僕を指差しながら笑顔で木田さんは答えたのだが、

「うーーん

それはそうと・・・・

そうか・・・格闘技ね~・・・」

木田さんは何かを言いたげだ。


「どうしたんですか?」

僕はたずねた。


「いやねーー。

あっ!それじゃあ、夏休みとかどうするつもりなの?」


「えっ突然どうしたんですか?

夏休みですか?えーーーーといや別に~、今のところ何の予定も入ってないですけど・・・」


「ふーーん」


「なんかあるんですか?」


「いやさあ、お前も知ってのとおりZANDはボランティア活動なんかも積極的に支援してやってるだろ。

だから是非、寮生たちにもボランティア活動に一度は参加してほしいと思ってさー。」


「ああ、ボランティアぁ~・・・・。

あっ!

そう言えば、榎本さんもそんな事を前回の舎懇で言ってましたっけ。

学舎に入ったら1度はボランティア活動に参加してZANDが一体どういう事をやっているのかを知り、ZANDの人たちや様々人たちと交流をしろって・・」


僕は以前、舎懇で榎本さんがボランティア活動を熱く語っていた事を思い出した。


「そう!そうなんだよ!

榎本なんかはボランティア活動をよくやっていたし、歴代学舎に入ってきた奴らはみんなボランティア活動を1度は経験してるしな。

それを考えたら今年の入ってきた1年生はまだボランティアやっていないだろう。」

木田さんそう言いながら僕を見る。


ギクッ


僕はなんだか嫌な予感がしたので、

「そうですねーー。

そうですよねーーー。」

と少しずつ後ずさりし

「あっそうだ。思い出した。 レポートを今日中に仕上げるんだった」

僕はこう独り言をいいながらこの場から退散しようとしたのだが・・・、

案の定、

「だから、タケオ~お前やってみろよ!」

お声が掛かってしまった。


『いやーやばい!お声がかかっちゃったよー。俺ボランティアなんかこれっぽっちも興味ないのに』

と思いつつ、

「うーーん。ボランティア活動ですか~」

と、お茶を濁す僕。


「そう!ボランティアだよ。1度はやっておいたほうがいいぜ。」

と木田さん。


「でも僕、生活費とか稼がないといけないし~仕送りないですから。

ボランティアにさく時間はあんまりないんすよね~」

さらにお茶を濁す僕。


「タケオはこれまでボランティアやったことあるの?」


「ないっすね。」


「それなら絶対やった方がいいよ!うんやった方がいい!

そんなずっと継続的にボランティアやれって事じゃないし」

明らかに僕を説得しようと試みる木田さん。


「ええーーそんな事言っても・・・。
そうだ!

田端とか佐竹や白を誘ったらどうです?

彼らならきっとやると思いますよ」

お茶を濁すだけではなく他の同期をも巻き込もうとする僕。

しかし、

「彼らは彼らでまた俺から頼むから、今回はタケオ是非引き受けてくれ!」

と、木田さんはあくまでも今回は僕をターゲットに絞ってしまったようなので


「どんなやつなんですか?」

と僕は、一応内容だけでもと思い聞いてみた。


「えっとなー。夏休みに知的障害者を対象にしたキャンプをするんだ。それで・・・・・・・・の・・・・・を・・・・・・・に・・・・・・で、・・・・・・のアシスタントを是非タケオに頼みたいんだよ。」

木田さんはきめ細かにそのボランティアの内容を説明してくれた。

しかし、僕にとって全くと言っていいほど興味が持たない内容だっただけに、

「へーー。でもな~」

と僕の反応はいまいち。


けれども木田さんは僕の心を見透かしたのか、それともただの偶然だったのかそれは知る由もないが、突然、

「そう言えばタケオって彼女いたっけ?」

と僕にとって一番旬の話題ながらも一番痛いところである内容を僕にふってきたのだった。


「えっいきなりなんですか?

別に・・・・それは・・・・いないですけど・・・」

と口ごもってしまいうつむいてしまう僕。


すると木田さんの目が光り、すかさず


「あ~そうかそうか。そうなんだ。」

と、なにか勝ち誇ったかのように声のトーンをあげて、そして急に独り言のようにこう切り出した。

「あ~そうだ、そうだ。

そう言えば、このキャンプ。

スタッフのほとんどが、フリーの女子大生なんだよな~。ここに男手1人でもいたら素晴らしいんだけどな~」


「えっ??」


僕の旗色が一瞬にして変わった。


しかし、今考えると

「んなうまい話あるわけねーだろ!」

と疑うはずなのに・・・・・僕はそれでも単純です。




姉さん、事件で
す♪




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